接着剤もボルトも不要︖ CFRTPの「熱膨張」を利用したアルミとの新接合技術

加熱したアルミに挿入するだけ。樹脂の復元力とくさび効果で挑む、次世代の異種材料接合

自動車の軽量化で注目されるCFRTP(熱可塑性CFRP)とアルミニウムの異種接合において、接着剤やボルトを使わない新しい手法が研究されています。CFRTPが持つ「加熱すると板厚方向に膨張する」特性を活かし、テーパ形状と組み合わせることで、強力な接合強度を実現した実験結果をご紹介します。

近年、自動車や輸送機器の軽量化において、金属よりも軽く強い「CFRTP(熱可塑性炭素繊維強化プラスチック)」の採用が進んでいます。しかし、そこで常に課題となるのが「金属部品といかに接合するか」という問題です。
従来はボルトなどの「機械的接合」や「接着剤」が主流でしたが、重量増加やリサイクルの難しさといったデメリットがありました。
そこで今回は、CFRTPの「加熱による膨張」というユニークな特性を利用した、シンプルかつ強力なアルミニウムとの接合技術に関する研究をご紹介します。

どのような仕組みなのか?

この技術の最大の特徴は、「CFRTP自身の膨張力で、内側から金属を押して固定する」点にあります。
CFRTP(マトリックス樹脂:PA6)は、融点付近まで加熱されると、成形時に圧縮されていた炭素繊維の応力が解放され、板厚方向に膨張するという性質を持っています。 この性質を利用し、以下の手順で接合を行います。

1.加熱

アルミニウム片(A5052)に溝を掘り、所定の温度(実験では523K〜823K)まで加熱する。

2.挿入

加熱されたアルミの溝に、常温のCFRTP板を挿入する。

3.冷却

そのまま放置して冷却する。

アルミからの熱伝導でCFRTPが溶融・膨張し、溝の壁面を強い力で押し付けることで接合強度が生まれます。

実験結果:温度と形状のベストバランスは?

研究では、加熱温度と溝の形状(ストレート溝 vs テーパ溝)を変えて引張試験を行いました。その結果、以下の興味深い事実が判明しています。

●最適な加熱温度がある ストレート溝の場合、加熱温度が723K(約450℃)の時に最も高いせん断応力が得られました。

・温度が低すぎる(573K以下)と、膨張が足りず接合しない。
・温度が高すぎる(823K)と、樹脂が溶け出して炭素繊維が露出し、逆に強度が下がる。

●「テーパ溝」が劇的に効く 溝の形状を、入口が狭く奥が広い「テーパ形状(くさび形)」にすると、接合強度は飛躍的に向上しました。 これは、膨張による加圧に加え、引張方向に対してアンカー効果(抜けなくなる効果)が働くためです。

結論:接着剤と同等以上の強度を実現

実験の結果、フルテーパ形状の溝を用いた場合、一般的なエポキシ系接着剤と同等、あるいはそれ以上の接合強度が得られることが確認されました(最大で接着剤比27%増)。
・ボルト不要: 部品点数削減と軽量化。
・接着剤不要: 硬化待ち時間がなく、リサイクル時の分別も容易になる可能性。
CFRTPの「戻ろうとする力」を逆に利用したこの接合技術。マルチマテリアル化が進む次世代のモノづくりにおいて、非常に有用な選択肢の一つと言えそうです。

出典

小平 裕也 他, "CFRTPの熱膨張を利用したアルミニウム合金との異種接合", 塑性と加工, vol. 59 no. 690, 2018.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sosei/59/690/59_135/_article/-char/ja/

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